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日々の破片

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2006-01-20

_ 遅さと緊張

マリオカートでレインボーなんとかコースをやってる時にスピードを出すってのは相当な緊張を強いられることだ。でも遅くやってる分には緊張感なんてこれっぽちもない。

でも、遅くて遅くて緊張が強いられるということもある。

車の中で聴くCDに飽きてきたので(CDチェンジャーに入れてしまうと面倒なんでそればっかり聴くことになる)そろそろ取り替えようかと思ったが、本当に聴きたいやつが見当たらなかったので適当に最近聞かないコーナーから1枚取り出したらチェリビダッケの悲愴だった。

チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調「悲愴」(ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団)

本当はメンゲルベルクのが欲しかったのだが売ってなかったので、そこで手に入るやつで一番古臭い演奏をしそうなのがたまたまそれだったという理由で買ったのだった。でも、好みじゃなくてしまいこんでそのまま忘れていた。

で、演奏は忘れていたものの、悲愴を車の中で聴くってのは、もしかしたらカウリマスキの映画みたいでそれはそれで面白かろうと持ち込んだ。

が。

第一楽章提示部の第2主題が始まったところで固まってしまった。遅い。どうかしたのかというほど遅い。あまりの遅さにクラリネット奏者の息が詰まって死ぬんじゃないかというほど遅い。そのためにとんでもない緊張感が生まれる。

さらに聴けば、弦のばらつきとか、細かなテンポの揺れとか、まったくどうかしてしまったんじゃないかというくらい、無体な演奏だ。

ミュンヘンってケンペが振ったブルックナーやリヒャルトシュトラウスの印象が強いから深みがある(悪く言えば微妙なそろわなさがある)音だけどむしろ演奏は適度にうまい程度のオーケストラだと思っていたのだが、これはいったいなんだと驚くほどの玄妙さ。いや、確かにミュンヘンのイメージ通りなのだが、あまりの遅さから生まれる緊張感がとんでもない音を生んでいるという感じ。

悲愴には突然、何回か噴火するような箇所がある。それが、一音一音聞き取れるほどの緩慢なテンポで演奏される。

これは車で聴くCDじゃない。

この指揮者は、オーケストラにも多大な負担をかけるが、聴き手にもとんでもない緊張と負荷を強いる、ひどいやつだ。


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