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日々の破片

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2008-09-30

_ ビュットネル

ぽっぺんさんがガウスの1から100までの整数を足す話を書いているのを読んで思いだした。

先日読了したエルデシュの伝記に、そのエピソードをエルデシュの口を使って語らせているのだが、ちょっと印象深かったのは、それまで僕が読んだことがある天才ガウスの早熟ぶりを示すエピソードとは異なる視点から書かれていたからだ。

放浪の天才数学者エルデシュ(ポール ホフマン/Paul Hoffman/平石 律子)

ちょっと長いが引用する。

「中世のおぞましいなごりで、暴力でたたきこむといったやり方をする教師がクラスを担当していた。ビュットネルという名のその教師は100人ほどの少年たちを教えるには、生徒が自分の名前を忘れるほどおびえてなにも考えられない状態になるまでムチ打つことだと考えていた」

ある日ビュットネルがムチを手に教室の中を歩きまわりながら、1から100までのすべての整数の和を出すようにと言った。いちばん最初に問題ができた者は、ビュットネルの机まで行って、自分の石板を置いてくることになっていた。次にできた者はその上に石板を置く。ビュットネルは生徒たちがその問題を解くのに授業時間いっぱいかかるだろうと思っていた。ところが数秒後、ガウスが飛んでくると、石板を教師の机の上において自分の席に戻った。ビュットネルは、他の生徒たちの計算が終わるまでおとなしく座っているガウスに、冷笑的なまなざしを向けていた。ビュットネルが石板を表に返して答えを確かめていくと、次から次へとまちがった答えが現れ、かれのムチは休むことなく振りおろされ続けた。ついにガウスの石板の番が来た。そこには単に5,050とあるだけで、計算式がひとつも書かれていなかった。驚いたビュットネルはガウスにどうやったのかと尋ねた。「そこでガウスは説明した。教師はそれがかれの人生で最も重大な事件であることに気づき、それ以来ガウスにいつも目をかけるようになった。」とエルデシュ。ビュットネルはガウスに参考書を与えてやり、「そうしてもらったことをガウスは生涯感謝していた」

ガウスのようになるのは難しい話だが、ビュットネルになら、なれそうな気がする。というよりも、そのようであるべきだし、そうありたい。

おれが恐れるのは、5,050と書かれているだけなのを見て、計算式がないという事実だけでムチを振りまわしたり、あるいは説明を聴き終わったところでニタリと笑い、「いや、ガウス君、この問題は、まじめに計算することを学ぶために出したのだよ。さあ、私のムチの前に立ちなさい」と言いだすような人間であり、知らずにそういう振る舞いをとってしまうことだ。

というわけで、この本でのこのエピソードの書き方は印象的だった。


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