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日々の破片

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2009-03-29

_ チェンジリング

イーストウッドのチェンジリングを観に歌舞伎町。

最近、イーストウッドはまったく観ていなかった(最後はスペースカウボーイか、ヨットの大将のかどっちかだ)のだが、観れば相変わらず良い作家で、いろいろ見逃してきたのが悔やまれる。

すげぇ作品だった。もっともイーストウッドの映画はどれもすげぇが。

最初、ゆるいジャージーな音楽、あああああ映画が始まる映画だよ、と思わずどきどきするようなクレーン撮影(もっともCGかも知れないが、少なくとも、その文体はクレーン撮影)で町の風景が映る。

ときどき妙な歪みがあって、バスから子供を学校へ送り出し、それから戻って来ることろでは、椅子のところのカメラがバスの出口まで付いていって、そこまで主人公を追っているのだが、そこから一足先に席へ戻り、学校の門へ向かう子供たちだけを(ディープフォーカスではなく)バスの窓ガラス越しにロングで撮り続け、そこへ主人公が戻り、席へ着く。したがって、学校へ吸い込まれるところ(しかしディープフォーカスではないため、主人公の子供がどれかはわからない)だけが妙に強調される。だから、ある程度筋を知っているおれは、ここでそれが子供を見た最後になるのかと思った。だが違った。

この印象的な学校は、最後の数シーン前に再度登場する。

_ 3種類の文体

連れてこられた子供の薄気味悪い笑顔。これは一体なんなのかという恐怖感(というよりも単なる違和感の表現なんだろうけど)。この表情による文体は、警部の描き方にも共通している。

農場で共犯者の子供を捕まえるまでの表現。すべての刃物を(ほとんどモノクロで)確実にフレームに収め、突然の鶏による物音、扉を開けるたびに何かが起きそうな緊迫感の強調。典型的なホラー映画の撮り方。実におっかない。

精神病院の描写。最初のショック病棟のようないろいろな患者の(割とステロタイプな)描写(声)。同室の女性の繰り返す言葉。主人公がどんどんやつれていく描写とか。

共犯の子供が、他の子供が振り回す物差しが立てる物音によってフラッシュバックするのは、イーストウッドの得意な文体。ゴーストライダーとかペイルライダーとか。何かよからぬことが起きたのだが、そのものずばりは描かない。バードのシンバルのフラッシュバックというのもあったな。

最後は、ほのかな救いで終わる。まったく救いはないのに何か救われたような気分にさせるラストというのはイーストウッドの傑作に共通する作劇手法(たとえばペイルライダーの最後や、結局単に死んだだけなのだがそれが救いでもあるライプスタッフとか)。

音楽はイーストウッド自身。

もう、安定した技術を自由に組み合わせてすごい作品を作れる大作家になったということだな。

映画的な肝は、取り換えっ子が実に不気味で似ても似つかないことにあるようだ。

実際には、歯医者や教師の証言なしには成立できないほど、似ていることが暗示されている。主人公でさえ違和感を覚えながら、風呂に入れるまでは半信半疑だったし、ご近所さんはすっかり息子そのものだと認識しているようだ。

したがって、もし、イーストウッドが息子と取り換えっ子を1人2役で撮っていたら、別のホラーにもできたわけだ。誘拐のショックで異常を来し、やっと戻ってきた我が子を認識できなくなったとしか考えられない行動を取る女性、というロサンジェルス警察のストーリーに沿った展開だ。

その場合、2種類の撮り方を組み合わせて、異常なのは女性(と後ろに控える長老派)なのか子供(と後ろに控える警察)なのか。

でも、あえて、不気味でこれっぽちも似ていない子供を使っているということは、イーストウッドの狙いはカフカの審判のような、異常な官僚組織(警察だってそうだ)に翻弄される個人の戦いという構図のほうなのだろう。そこが本当のホラーということになるコード12。

_ 誓約の持つ重み

日本ではキリシタンと戦前の共産主義者くらいしか、面従腹背せずに主張を固く守って死ぬまで頑張るというのはあまり知らない。仁義礼智忠信孝悌の順なのだから、個人の信条より仁とか義のほうが重要で、したがって、この女性の立場であれば、すでにして仁にも義にも反している法を守る必要はなく、さっさと誓約書にサインして出て来てから、文句を垂れてもまったくOKだ(中国もそうだったのだろう。王であっても仁や義にもとる行為があれば、弑君も許されないわけではなく)。でも、誓約が重ければ、それはできない。もっとも、ルネサンスのイタリアでは、ガリレオはわたしは間違ってました、とさっさと頭を下げて、それでも地球は回っていたというのはあるわけだし、それが通用していたようだ(半拘束状態にされたとはいえ)。どのあたりから、サインの重みがああまで強くなったんだろうか。

_ エヴァンゲリオンの予告編

私を月へ連れてってが流れれば、スペースカウボーイか竹宮恵子をいやでも想起するし、カウボーイと出てくればビーバップだし、竹宮恵子なら地球へだなぁ。

_ チェイサーの予告編

なんか、すごくできが良い映画のようだ。

_ スタートレックの予告編

いきなりグランドキャニオンみたいなところをオープンカーが断崖めざして速度を上げて、おや、50年代の映画でもないのに、なんでたったひとりのチキンレースと思って観ていると、車を急停止しても止まり切らないもんで、運転手は外へ飛び出すが、加速度がついているため、そのまま前方に転がって崖から落ちるが、かろうじて端に手をかける。っていうか子供。

そこに警官らしきやつがやってきて救いの手を差し伸べる。で、その手の持ち主の全身をカメラが振り返って映すと何やら金属製のロボットのような、と、突然SFになり、救われた子供が名前を訊かれて「ジェームズ・カーク」と答える。

カーク?

Where's Captain Kirk: Very B.O. Spizz(Spizz Energi)

というわけで、その名前を知らなければまったくなんの映画か見当もつかない始まりをする予告編(もっとも、その後、えらくきれいなロケットが飛び交うシーンが入って、スタートレックとクレジットが入る)。

確かにファイナルフロンティアを旅する船の船長っぽい少年時代かも知れないなぁとは思った。

というか、おれがまた聴きたいのはモノクロームセットのWhere's Captain Kirk ? なんだが、ラフトレード時代のシングルも収録していると書いているのに、カーク船長はどこ? が入ってないのが気に食わないから買わないけど、なんで入ってないんだ?

The Independent Singles Collection(Monochrome Set)

と思ったら、どうも声が違うように感じてはいたけど(ラフトレードからヴァージンになったときに歌い方を変えたんだと思ってた)、おれはモノクロームセットとばかり思っていたら、スピッツの歌だったのか。はじめて知った。The monochrome set


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