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日々の破片

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2009-08-16

_ かっこ悪いこと

コジョカルとコボーを主演に迎えた眠れる森の美女を観に上野。

マラーホフ版はなんか寒々とした(しかし踊るための平面を大きく確保したとも言える)舞台だし、妖精たちが全員同じような色の衣装なせいもあってプロローグが平板な印象を受ける。その分、カラボスが異彩を放ちまくるとも言えるけど。マラーホフ版がすばらしいのは、退屈きまわりない(かんきまわりないタイポ)2幕をアタッカに毛が生えた程度に省略していることだ。

とにかくえらく混んでいて、元々チケットもNBSのWeb予約に失敗して、ぴあでは売り切れ、辛うじてe+で5Fの後ろが取れるだけ(しかも並びが取れなかった)という状態で、どのくらい混んでいたかというと、男性用トイレはB1除いてすべて女性へ解放するというくらい混んでいた。そのせいでいつもはがらがらな男性トイレがうんこおじさんの行列で満杯していた。おっかねぇなぁ。

で、第一幕まで音楽は頑張っていたと思うけど、なんか舞台が遠い(でもド真ん前見下ろしで、実はへたな2FL側なんかよりよほど見やすいような気もするが)からか平板なところに、真っ白な衣装でコジョカルが出てくると突然いきいきした感じになって、驚いた。きびきびはきはき動きにメリハリがあるのかな。ただ、大技繰り広げのような踊りではなく、うまい人がきちんとやってるだけという感じもする。

で、休憩の間に外に出ていると、年取った大先生らしきおっさんと、それを取り巻く数人のおばさんの集団が近くにいて、大先生が大きな声で、「最低だね最低」を連発していて、うっとおしいながらもほほえましく聞いている状態にされてしまった。「まあ、最低だね。妖精は最低、なんちゃらは最低、なんとかも最低、コジョカルだけだ」と吐き捨てまくっている。ふーん、年寄りなら20年前、30年前より、ばかばかしく技術も体型も向上して、これが最低なら君の世代はなんなのかなぁとか聞いていると、ついに舞台美術にまで最低論が移る。「こんな最低なの観たことないね。衣装は最低、舞台も最低、幕のあの下品なのはなにかね? クリスマスツリーじゃあるまいし緑に赤でバラなのかバカなのか最低以外の何物でもない、まったくこれだからもにゃんもにゃん」

すかさずおばさんの一人が愛の手を出す。合いの手かも。

「あの幕はマラーホフの指定でしょう。マラーホフ演出だし」

「マラーホフ……いや、そんなことはないでしょ。あんな下品な」

「でも、マラーホフ版のインタビューのときの背景にもわざわざ利用していたし……」

おれは当然、おっさんは、そらみろマラーホフってそもそも名前も下品だし、そんなマラーはシャルロットコルデを遣わせて成敗してくれるわ、とかなんとか言いまくることを期待した。

だが期待は裏切られた。

その後、おっさんは貝になってしまった。なんだ甲斐性がない。自分の美学に基づいて最低論を垂れているのではなかったのか。単に外から来るものはすべて良しとする黒船待望論者だというだけなのか。

見損なったぜ。

というわけで、最低論を吐くのなら、自分の観点から垂れて欲しいものだし、そうあるべきだな、と他山の石。

で、コボーは普通にうまいし、宝石が出てきたら普通にうまいし、青い鳥のカップルは楽しいし、赤ずきんのショールはマラーホフの下品なジョークが効いているし、シンデレラの音楽は好きだし、楽しかった。

にしても、去年だか夏の夜の夢のコジョカルを観に行ったときはこんなに混んでいなかったことを思うと、なんでこんなに混んでいたのだろうか。8/15という日付に関係しているのか、コボーがすごい人気なのか、1年の間に何かがあったりしたんだろうか、とか、不思議に思った。

で、夜の動物園で、ツキノワグマの家の窓にかぶりついて、立ったりうろうろしたり葉っぱ食ったり、窓からこっちを観たりするのを思う存分眺めてから上野を後にした。

_ ブルレイ

リゴレットが観たい。

モダンな演出のやつ。

こないだ、友人宅で観せてもらったフローレスがマントヴァ公爵やったようなやつ。あれは演出が実に良かった。

で、アマゾンを探すのだが、ジャケット写真を見る限り、どれもこれも19世紀から時代の流れが止まったようなのばっかりでうんざりする。

でも、このしょぼくれた執事のような服着たリゴレットはなんだろう? とえらく気になるのがあった。

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」 [Blu-ray](-)

が、これはしたり、ブルーレイ。DVDでも出してくれないかなぁ。

_ ラ・ボエーム

Rigoletto [DVD](Verdi)

結局マクヴィカー版を買おうということで、同じリージョン2のUKに行ったら安くない(GBP 24.49)。FR行ったらもっと高い(EUR 63,00)。ヨーロッパの若者はDVDを買えないだろ。大人でもほとんど買えないんじゃないかというか、ごく少ない富裕層が山ほど買うことで支えている市場なんだろうか。

で、USへ行くと普通に売っている($26.99)。リージョンも今はほとんどフリーなんだな。日本とかUSは文化的に平坦な印象があるが、価格的にもそのとおりなようだ。

で、USでオペラを買いまくろうとしたらヴェルディだらけになった。送料のこともあるのでバランスを取ろうとネトブレコのボエームを買おうとしたら、存在しない。

ラ・ボエーム デラックス版 [DVD](アンナ・ネトレプコ)

日本では予約可能でUKでは売っている(たいして値段は変わらない)。しかしUSには無い。そういうこともあるんだな。


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