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日々の破片

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2010-09-26

_ 現実はおっかない

ソルトって映画の中で、ソ連のスパイ養成所のエピソードがあった。

そこでは誘拐されてきた子供たちが本名を名乗らないで、圧倒的なエリート教育を受けていたのだった。

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で、モスクワ攻防戦を読んでいたら、同じようなエピソードが出てきて、あながちフィクションとばかりも言えないのだな、とちょっと驚いた。驚いたというのはあまり正確ではないが(北朝鮮が誘拐した人を利用したりする、というのがあることは知っているわけだから)不意を突かれたというか、なるほどなぁと納得したというか、そういった感覚。

そういう破壊活動を仕込まれる運命をたどった人たちが何人か登場するのだが、そのうちコクロフという人に興味を持った。

19歳の口笛吹きなのだが、ドイツがモスクワを占領した場合に将校を暗殺するためにNKVDに雇われる。優秀なボードビリアンでありながら、冷徹な殺人マシーンとしてその後の人生を歩むことになる。

モスクワ攻防戦――20世紀を決した史上最大の戦闘(アンドリュー・ナゴルスキ/津守滋/津守京子)

この男は、いろいろな事情からマシーンであることが嫌になり、1960年代に祖国を裏切って(それも映画的な裏切りである)アメリカに亡命する、ということは1941年に19歳だから、40代ということだろう。

で、コクロフのその後はというと、カリフォルニア大学の心理学の教授となり、モスクワ攻防戦のためのインタビュー時には名誉教授となって悠々自適な生活をしているのだが、待てよ? いつこの男は心理学を学んだんだ?

そこで、不思議に思う。

カリフォルニア大学で教授-名誉教授になっているのだから、たとえばCIA経由でアメリカ合衆国が便宜を図ったとしても、教授ってことはないだろう。

たとえば、こういうことなのかなぁ。

亡命後、一定の給付金を貰えたので、大学に入って心理学を勉強し、その後博士課程へ進んで学位を取って教授になった。

そこから、ちょっと別の方向へ考えが移る。

時々本を読んでいたり、歌手とか演奏者とか作家とかその他の人々の経歴をみたりしていると、もともと法律を学んでしばらく仕事してから、やはり音楽家への道へ進みたくなって大学に入ってやり直して……のような例が結構出てくる。

おれは、そういうのは、お金持ちで本来働く必要が無い人なのだろうと思っていたのだが、もしかすると諸外国では異なるのだろうか?

たとえば、奨学金というのは、今になって日本でいろいろ育英会の転換もあって言われているが、本来的に投資ビジネスだと考えてみれば、大学に入って学問を積んで、その結果として新たな職に就いて利息をつけて返してもらうというビジネスモデルは十分にあり得ることだ。

ただ、学籍を持つ間は払う一方だから、中期的(5年以上)な投資ということになるわけだが。

それがビジネスとしてあり得る条件というのは、

・就労に年齢がハンディとならない(大学をやりなおすのだから当然だ)

・大学進学率が低い(あるいは学位を取る人数が少ない)というか、これは当たり前だがビジネスとして学位の価値を高める必要があるのだから少なくしなければならない。

・学位保持者を社会的に優遇(上記の投資を回収でき、かつ投資を受ける学生本人も当然、それなりの報酬を最終的に得られなければあまり意味がない)するシステム

が、あるということだろう。

日本は、そうとは思えないな。というか投資ビジネスとしてあまりうまくいかないので、今、ちょっと問題になっているわけだろうから。

でも、確か、ルネサンスよりちょっと前あたりからイタリアには大学があって、ほぼ男女の性差なしに学者がいまくったのだから、欧米では大学という人材育成機関の歴史は1000年近いことになる。

それに比べれば、女大学は江戸時代にあったけど、日本の大学はたかだか150年だ。

官僚/研究者養成のための機関という側面は十分に機能しているように思えるが、投資ビジネスが可能となるような職業学者(MBA保持者とかをこのように呼ぶことにしよう)養成ビジネスとしてはまだこれっぽちも成熟していないどころか生まれてもいなくてもしょうがないだろう。

ということは、投資ビジネスとしての奨学金というものがまだ始まったばかりなので問題もあるかも知れないが、将来的にはそれがビジネスとして成立できるように社会がその方向で合意を形成していく必要があるということだろう。

でっきるかな? でっきなきゃだめだろな。

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