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日々の破片

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2011-04-11

_ ばらの騎士

新国立劇場でばらの騎士。

ドイツ人が指揮者、元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーとほぼ全員敵前というか原発逃亡(と思うよなぁ)してしまって一体どうなることやらと思ったら、すごく良かった(曲が良いのだからある意味当然だが)。びっくりだ。特に指揮者が変わってしまってどうなるのかと思ったオーケストラが期待以上の出来。新日フィルというのはどうにもがさつな、弦の音が汚い印象があるのだが、そういう感じも受けなかった。(むしろエッジが効いてないないのかも)

元帥夫人は他の2人が弱い分目立ったというか、きれいな声で良かったのではないかな。オクタヴィアンは1幕ではほとんど聴こえないのでこりゃだめだと思ったが、段々良くなってきた。もしかしたら初日ということもあってセーブしてたのかも(元々1幕はオーケストラが鳴り過ぎるきらいがある曲というのもあるかな)。

ゾフィーは特になにも印象がない。

だから、3重唱のところとか、元帥夫人ばかりが目立つ感じがしたが、オーケストラが実に良い音を出していたのではないかと今になって思う。名曲だ。

オックス男爵のフランツハヴラタという人は演技含めて実に良い(この人は元の配役のまま。ということは、オリジナルの配役だったらどれだけ良かったのだろうか)。なんかキャリアをみると魔笛ではザラストロとパパゲーノをやったとか書いてあるので、なんでもできてしまう器用なバリトンなのだろう。オクタヴィアンと元帥夫人の関係を悟るところのすっとんきょうな声の出し方とか。

それにしても、なんとも切ない物語ではある(だが、実にきっぱりと気持ちが良い物語でもある)。

子共がプログラムを読みながら、ホフマンスタールの「この劇のおかしさは魅力的な元帥夫人をころりと忘れてオクタヴィアンが小娘とくっつくところ」とか、シュトラウスの「この劇のおかしさは小娘の(忘れた)」とか、やたらと小娘という書き方してるけどなんでだろう? とか言うので、おそらく、見ての通り、オペラ(楽劇だけど)の観客はじいさんばあさんばかり、つまり元帥夫人のほうに近い人ばかりだからだろうとか答えたが、そういうおれがそうだった。

(実際、ゾフィーはオクタヴィアンのじゅげむのような本名をぺらぺら言えるようなつまらない人生観しか持っていない(貴族名鑑を眺めるのが趣味)のだから、どうでも良い小娘みたいな書かれ方をしてもしょうがないし、そういうふうにホフマンスタールが造形したわけだが。なんか、三顧の礼の最初のときに劉備がそれがしは漢の寿亭候のなんちゃらなんちゃらとかぺらぺら名乗って、小僧にそんなの覚えられるかバカとか言われるのを思わずにはいられないところだ)

経験を積んだ魅力的な女性が自らの老境を悟りそれを受け入れるという表面的な物語の下に、貴族社会の終焉(つまるところはヨーロッパの死ということだ)、純粋芸術(まあ、既にして楽劇や交響詩が純粋かというと微妙なところがあるわけで、それを作曲したり劇作したりしている当人たちがそれをわかっているのは間違いない)の終焉、というのが透けて見えて、しかもそれが歴史的な事実になってしまうということが、この作品の深みというやつだろう。

それにしても名曲だなぁ。

R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」 [DVD](クライバー(カルロス)/R.シュトラウス/ウィーン国立歌劇場管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団)

(これを持っているし、演奏は全然次元が異なるといってよいのだろうが、それでも今日の出来具合であれば、おれはDVDのクライバーより新国立劇場を観るほうが好きなようだ。劇場で観るというのはやはり何かが違うのだろう)


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