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日々の破片

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2019-02-24

_ 紫苑物語

新国立劇場で紫苑物語。

失敗したのは、千秋楽のチケットを取ったことだ。こんなにすごい舞台とは想像していなかった。あと3回くらい観たいが、もう遅い。残念極まりない。早く再演して欲しいものだ。

この作者の作品は、一度だけ70年代の中ごろ、東京文化会館で現代の作曲家展のような交響作品を集めたコンサートで聴いたことがあり、金管の響きが(どことなくスクリアビンを思わせなくもない)とてつもなく美しい音楽を作る人だな、と思った記憶があるのだが、今回も2幕の途中で音の構成がそういうところがあり、とてつもなく美しかった。

が、音楽だけが良いのではなく、なんといっても舞台芸術が素晴らしい。2階建て構成なのだが金属的なものをすごく生かしていて、途中そこに鏡が入り、中央のスクリーンにアップが入り、基本は暗いのだが、奥行きまで作られてこれまた圧倒的だった。

衣装もびっくりで、日本人デザイナーの手によるものかと思ったら(基本は狩衣のバリエーションに見える)そうではなく、主人公の2重性を片身で色が異なる衣装で表したり(色と性格付けに密接な意味を持たせているように見えた)、これまた良い。

歌手がまたえらく演技を含めて抜群。主人公の独立不羈の立ち姿、小狐の弱々しさ、謎の仏師の空とか実に良い。

終演後に子供も指摘していたが言葉の繰り返しが「あなたのなんちゃら」を「あなたあなあなたのなんちゃちゃら」のような方法で音楽を形作らせるのもおもしろい。

あまりにおもしろく、しかもべらぼうな内容だったので、ついホワイエで原作を買ってしまった。

石川淳はおれには何よりも雨月物語や春雨物語の現代語訳の作家なのだが、(なぜか創作のほうはあまり食指が動かなかった)、ここまでのべらぼうさとは知らなかった(なんか九州のほうを舞台にした作品を読んだ覚えがあるのだがまったくわからん)。

紫苑物語 (講談社文芸文庫)(石川淳)


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