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日々の破片

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2010-09-17

_ 英国ロイヤルオペラの椿姫

元々(金の問題もあるけど)ゲオルギュという歌手については何も知らないし興味もないのでパスするつもりだったのだが、チケットをプレゼントしてもらえたので行く。と思ったらゲオルギュはキャンセルになったが、元々知らないので、それは問題なし。

場所はNHKホール。指揮はパッパーノ、ヴィオレッタはヤオ(ヤオという苗字はポール・ヤオをすぐい思いつくが、この女性はアルバニアの出身。アルバニアといえば、地理的には東欧だが文化大革命の中国の影響下にあってしかも鎖国しているという非常に不可思議な国というイメージだけがあるのだが、アリア政権の比較的うまくいった改革によって開国して今ではオペラ歌手を輩出するようになったのだな)、ヤオは小柄で(パッパーノと並ぶと同じくらいの背丈だが、アメリカ人のアルフレードと並ぶと頭2つ分以上小さくて、気丈ではあるが孤独に打ち負かされそうになるヴィオレッタを表現するには向いていると思った。地理的にはマケドニア人なのかなとか思うが、ギリシャの女性というとすぐにメリナ・メルクーリが浮かぶのでそれはないだろうなぁとか思ったり。

声を震わせて強弱をつけるタイプの歌手で技巧的には(ときどき地声はこういう感じかなと気づくところがあって、それはそういうものだろうけど)うまいのだと思うが、場所が2階左翼の奥で3階の天井が狭い、どうにも音が入らない席だったので、相当な音域がカットされていたように思う(あるいはそういうCDで聴いても生で聴いても同じような音しか出せない歌手なのか)。というか、NHKホールって確かに音が悪いなぁ。残響がこんなに無いとは思わなかった。

1幕は指揮が良いのか、とても快調。だが、あまりにも快調なので作曲の構成ミスじゃないかというような、ぶつ切れ感をすごく持った。

2幕はとても良い。というか、親父役が実に良くて、あれ、こんなに良い音楽だったのかとちょっと驚く。ただ、演出のせいで、3歩引いたところでうつむいて歌うので、さあお泣きなさいとか、どうも念仏を唱えているかのように見える(歌は歌として)。

最初のところでアルフレード(全体的には実にアルフレードらしいでくの棒という印象。ディズニープリンスのようだと思ったら本当にアメリカ人だった)が歌う、これでは漢が立たないぜの歌が唐突に目だって、おやこんな良いメロディーがあったのかとはっとする。

と書いていて気づくが、パッパーノってダメ指揮者なんじゃないか? メリハリを付けすぎて音楽の流れをブツ切れにしているような(そこがオペラ向きなのかも?)。ただ、2幕の指揮台に立つやいなや振り始める思い切りにはちょっと度肝を抜かれる、というか、やっぱりメリハリを付けすぎなんじゃないかなぁ。

3幕はすばらしい。トラヴィアータの歌とか、あるいはわたしは元気を取り戻したわ飛行機ぶーんのあたり(飛行機ぶーんの演出はちょっと驚いたが、他の演出はデッカーの抽象舞台しか知らないので、本来そういうものかも知れないけど)、つまりヤオが良かった。親父は相変わらず3歩下がってうつむいて念仏。妙な演出だなぁ。

そのあたりの親父関係の演出に引っかかるのだが(かといって、目の前で胸を張って歌われても困るので、そういうものかも)、抽象化せずにかといってばかみたいな写実主義でもない奇怪な舞台装置(特に2幕2場の天井の角度とか、3幕の妙に高さを強調した鎧戸の部屋――牛様のお通りだの合唱のときに巨大なシルエットとして外の世界の猥雑さを強調することでヴィオレッタの孤立感を浮き立たせるのは見事かも)も合わせて、この演出は好きだ。2幕2場がだれないのは演出が良いからかも知れない。

ただ、この歌手、この指揮、この演出であれば、新国立の舞台で十分というか椅子や観客の数からは新国立のほうが良いというか、もし自腹で見に来ていたらちょっと別の感じ方をしたと思う。価格は1/8だからだ。

その意味でも先日のトリノ-フリットリはつくづく素晴らしかったのだな、と思う。


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